「技能実習制度はなくなるの?」
「2027年から始まる育成就労制度とは何?」
「技能実習と育成就労は何が違うの?」
「育成就労から特定技能に移行できる?」
外国人を雇用している企業や、これから外国人材の採用を考えている企業から、このような疑問が増えています。
2027年4月1日から、これまでの技能実習制度に代わって「育成就労制度」が始まります。
ただし、育成就労制度は単純に「技能実習」という名称が変わるだけではありません。
制度の目的や外国人材の受入れ方、転籍のルール、日本語能力の扱い、特定技能との関係など、さまざまな点が変わります。
特に大きなポイントは、
技能実習=技能を身につけて母国へ移転することを重視
という従来の考え方から、
育成就労=日本で働きながら人材を育成し、特定技能1号につなげる
という考え方へ変わることです。
この記事では、2026年8月現在の出入国在留管理庁の公表情報をもとに、技能実習制度と育成就労制度の違い、2027年から何が変わるのか、企業が今から準備すべきことについて行政書士が分かりやすく解説します。
1.育成就労制度は2027年4月1日から始まる
まず、最も重要な日付を確認しておきましょう。
2027年4月1日
この日から、原則として新しい育成就労制度が始まります。
育成就労制度は、2024年6月21日に公布された改正法によって創設されました。
出入国在留管理庁によると、改正法の大部分の施行日は2027年4月1日とされています。
つまり2026年現在は、
技能実習制度から育成就労制度への移行準備期間
ということになります。
ただし、2027年4月1日になった瞬間に、現在日本にいる技能実習生が全員帰国するわけではありません。
一定の経過措置が設けられており、施行日時点で技能実習を行っている外国人については、一定の条件のもとで引き続き技能実習を継続できる場合があります。
2.技能実習制度と育成就労制度の最大の違い
両制度の最大の違いは、制度の目的です。
技能実習制度は、技能実習生が日本で技能・技術・知識を学び、それを母国へ移転することによって国際協力を行うという目的を持っています。
一方、育成就労制度は、
日本の人手不足分野において外国人材を育成し、同時に人材を確保すること
を目的としています。
つまり、制度の考え方が大きく変わります。
技能実習
外国人を日本へ受け入れる
↓
日本で技能を習得する
↓
母国へ技能を移転する
という考え方です。
育成就労
外国人を日本へ受け入れる
↓
日本で働きながら技能・日本語能力を身につける
↓
一定の技能水準に到達する
↓
特定技能1号へ移行
という流れが想定されています。
出入国在留管理庁も、育成就労制度について、特定技能1号の水準の人材を育成することを制度の重要な目的として示しています。
3.育成就労は「特定技能1号への入口」になる
育成就労制度を理解するうえで、特に重要なのが特定技能との関係です。
これまでの技能実習制度でも、
技能実習2号を良好に修了
↓
特定技能1号へ移行
というルートがありました。
しかし、育成就労制度では、この関係がより明確になります。
イメージすると、
育成就労
「働きながら育成する期間」
↓
特定技能1号
「一定の技能を身につけた外国人材として働く」
という流れです。
つまり、今後の外国人雇用を考えるうえでは、
育成就労と特定技能を別々の制度として考えるのではなく、一つのキャリアパスとして考えること
が重要になります。
4.在留期間はどう変わる?
技能実習制度では、
-
技能実習1号
-
技能実習2号
-
技能実習3号
という段階があります。
一定の要件を満たした場合、技能実習を通算して最長5年間行うことができます。
一方、育成就労制度では、
原則3年間
が基本となります。
その3年間の中で、特定技能1号への移行に必要となる技能や日本語能力を身につけることが想定されています。
したがって、技能実習と育成就労では、制度上の在留期間だけでなく、その期間を何のために使うのかという考え方も異なります。
5.転籍・転職が一定条件で認められるようになる
技能実習制度と育成就労制度を比較したとき、外国人本人にとって特に大きな変更の一つが転籍です。
技能実習では、原則として実習先を自由に変更することはできません。
一般的な会社員のように、
「今の会社を辞めて、別の会社で働きたい」
という理由だけで自由に転職することは難しい制度でした。
一方、育成就労制度では、一定の要件を満たした場合、本人の意向による転籍が認められる仕組みが設けられています。
ただし、
「育成就労なら自由に転職できる」
という意味ではありません。
転籍には、
-
一定期間の就労
-
同一の育成就労産業分野内での転籍
-
技能・日本語能力などに関する条件
-
やむを得ない事情による転籍
など、法律・省令等に基づく一定の要件があります。
したがって、
技能実習=転籍が原則として難しい
から、
育成就労=一定の条件のもとで本人の意向による転籍が可能
へ変わると理解すると分かりやすいでしょう。
6.日本語能力も重要になる
育成就労制度では、技能だけでなく日本語能力の向上も重視されます。
育成就労制度は、最終的に特定技能1号へつなげることを想定した制度です。
そのため、外国人が日本で生活・就労するために必要な日本語能力を身につけることが重要になります。
出入国在留管理庁は2026年から、日本語講習を提供する日本語教育機関についても情報を公開しています。
2026年6月時点の日本語講習の提供状況一覧も公表されています。
今後は、
「技能だけを身につければよい」
という考え方ではなく、
「技能+日本語能力」
という視点がより重要になります。
7.育成就労の対象分野はどうなる?
育成就労制度では、受入れ対象分野についても重要な変更があります。
育成就労制度では、原則として特定技能の受入れ対象分野と同じ分野を対象とする方向になっています。
これによって、
育成就労
↓
特定技能1号
という制度間のつながりを作りやすくなります。
ただし、すべての特定技能分野がそのまま育成就労の対象になるとは限りません。
各分野について、分野別運用方針や追加の基準などが定められています。
2026年には、介護、建設、宿泊、外食、農業、飲食料品製造業など、各分野について育成就労制度の具体的なルールが順次公表されています。
出入国在留管理庁のページでも、2026年8月5日までに運用要領が更新されています。
8.受入れ企業にも新しい準備が必要
育成就労制度では、外国人本人だけでなく、受入れ企業側にも準備が必要です。
育成就労制度では、受入れ企業を「育成就労実施者」として位置づけ、育成就労計画に基づいて外国人を育成することになります。
育成就労計画については、外国人がどのような仕事を行い、どのように技能・日本語能力を身につけるのかなどを具体的に定めることになります。
また、育成就労実施者には、各育成就労産業分野の分野別協議会への加入等が義務付けられることも重要です。
出入国在留管理庁は、2026年9月1日から育成就労計画の認定に係る施行日前申請を受け付ける予定としています。
つまり、制度開始前から企業側の準備が始まります。
9.監理団体は「監理支援機関」へ
技能実習制度では、監理団体が技能実習生の受入れや実習実施者への指導などを行ってきました。
育成就労制度では、新たに監理支援機関という仕組みが設けられます。
監理支援機関は、育成就労実施者に対する監理・支援などを行います。
制度上の名称だけでなく、外国人の保護や適正な受入れをより重視した仕組みになっています。
また、監理支援機関については許可制度が設けられています。
そのため、技能実習制度から育成就労制度へ移行する場合、現在の監理団体がそのまま同じ形で業務を続けられるとは限りません。
10.「技能実習は2027年4月に全部なくなる」は間違い
2027年4月1日から育成就労制度が始まるため、
「技能実習制度は2027年4月1日にすべて消滅する」
と考えている方もいます。
しかし、これは正確ではありません。
2027年4月1日時点で技能実習を行っている外国人については、一定の経過措置が設けられています。
例えば、出入国在留管理庁のQ&Aでは、2027年4月1日時点で技能実習1号を行っている外国人について、一定の条件のもとで施行後も技能実習2号への移行が可能とされています。
したがって、2027年4月以降は、
新しく育成就労制度が始まる
一方で、
既に技能実習を行っている外国人については経過措置が適用される場合がある
という二つの制度が一定期間並存することになります。
11.技能実習から育成就労になることで企業は何に注意すべき?
企業がこれから外国人を採用する場合、特に次の点を確認する必要があります。
① どの制度で受け入れるのか
2026年中に採用するのか、2027年4月以降に採用するのかによって、利用できる制度が変わります。
② 対象分野か
自社の仕事内容が育成就労の対象となる分野かを確認する必要があります。
③ 育成計画を作れるか
単に外国人を雇用するだけではなく、育成就労計画に沿って人材を育成することが求められます。
④ 日本語教育への対応
外国人が必要な日本語能力を身につけられるよう、企業側でも教育体制を考える必要があります。
⑤ 転籍への対応
育成就労では一定条件で転籍が可能になるため、外国人が長く働き続けられる環境づくりがこれまで以上に重要になります。
⑥ 特定技能への移行を考える
育成就労の3年間だけを見るのではなく、
育成就労→特定技能1号
という長期的な人材確保の視点が必要になります。
12.技能実習と育成就労の違いを比較
ここまでの内容を簡単にまとめると、以下のようになります。
|
項目 |
技能実習 |
育成就労 |
|---|---|---|
|
開始時期 |
現行制度 |
2027年4月1日開始 |
|
主な目的 |
技能移転・国際協力 |
人材育成+人材確保 |
|
在留期間 |
最長5年 |
原則3年 |
|
特定技能との関係 |
移行可能 |
特定技能1号への移行を制度上想定 |
|
転籍 |
原則難しい |
一定条件で可能 |
|
日本語教育 |
制度上の位置づけが限定的 |
日本語能力の習得を重視 |
|
受入れ分野 |
技能実習の対象職種 |
特定技能の対象分野を基本に設定 |
|
監理 |
監理団体 |
監理支援機関 |
|
企業の役割 |
技能実習を適正に実施 |
技能・日本語能力を計画的に育成 |
|
制度の方向性 |
技能移転 |
日本国内の人材育成・確保 |
13.育成就労から特定技能1号へ移行するには?
育成就労を修了したからといって、自動的に特定技能1号になるわけではありません。
特定技能1号への移行には、一定の技能水準や日本語能力などの要件を満たす必要があります。
ただし、育成就労制度自体が特定技能1号の水準を目指して人材を育成する制度となっているため、
育成就労→特定技能1号
というルートが今後の外国人雇用において非常に重要になることが予想されます。
企業側としても、
「3年間だけ外国人を雇う」
という考え方ではなく、
育成就労で採用
↓
技能・日本語能力を育成
↓
特定技能1号へ
↓
長期的な雇用を目指す
という人材戦略を考えることが重要です。
14.2026年は移行準備の年
2026年は、技能実習制度から育成就労制度へ移行するための重要な準備期間です。
出入国在留管理庁は2026年2月に育成就労制度の運用要領を公開し、その後も分野別の運用要領や基準を順次更新しています。
2026年8月5日にも運用要領が更新されています。
さらに、2026年9月1日からは育成就労計画の認定に係る施行日前申請が予定されています。
そのため、企業が2027年以降に外国人を受け入れる予定であれば、2026年のうちから制度を理解し、受入れ体制を整えておくことが重要です。
15.2027年以降の外国人雇用はどう変わる?
今後の外国人雇用は、
「技能実習生を受け入れる」
という考え方から、
「外国人材を育成して、長期的に雇用する」
という考え方へ変わっていくことが予想されます。
特に重要なのが、
育成就労
↓
特定技能1号
↓
特定技能2号
というキャリアパスです。
特定技能2号については対象分野などに一定の制限がありますが、対象分野であれば、外国人がより熟練した技能を身につけ、長期的に日本で働く道もあります。
したがって企業側にとっては、
「外国人を一時的な労働力として受け入れる」のではなく、「育成して長期的に活躍してもらう」
という視点が、これまで以上に重要になります。
16.まとめ|技能実習から育成就労へ何が変わる?
技能実習制度と育成就労制度は、似ているようで制度の目的が大きく異なります。
2027年4月1日から始まる育成就労制度では、
-
技能実習制度から新しい制度へ移行する
-
制度の目的が「技能移転」から「人材育成・人材確保」へ変わる
-
原則3年間の育成期間となる
-
特定技能1号への移行を明確に意識した制度になる
-
一定の条件で本人の意向による転籍が可能になる
-
日本語能力の習得も重視される
-
特定技能の対象分野を基本として受入れ分野が設定される
-
監理団体に代わり監理支援機関が設けられる
-
企業には育成就労計画に沿った人材育成が求められる
といった変更があります。
特に重要なのは、
技能実習=技能を学ぶ制度
から、
育成就労=日本で働きながら技能・日本語能力を身につけ、特定技能1号につなげる制度
へと制度の考え方が変わることです。
2026年現在、育成就労制度の具体的な運用ルールは順次整備されています。
出入国在留管理庁も2026年8月までに運用要領を更新しており、制度開始に向けて準備が進んでいます。
外国人をこれから採用する企業は、技能実習だけを見るのではなく、
育成就労→特定技能
という一連の制度を理解しておくことが重要です。
また、現在技能実習生を受け入れている企業については、2027年4月以降の経過措置についても確認する必要があります。
制度開始までに、採用方法、育成計画、日本語教育、支援体制などを確認しておきましょう。
よくある質問
Q1.技能実習制度はいつなくなりますか?
育成就労制度は2027年4月1日から始まります。ただし、既に技能実習を行っている外国人については一定の経過措置があります。
Q2.育成就労は技能実習の名前が変わるだけですか?
いいえ。制度の目的が大きく異なります。育成就労は「人材育成」と「人材確保」を目的とし、特定技能1号への移行を強く意識した制度です。
Q3.育成就労は何年間ですか?
原則として3年間です。
Q4.育成就労から特定技能へ移行できますか?
一定の技能・日本語能力などの要件を満たせば、特定技能1号への移行が想定されています。
Q5.育成就労なら自由に転職できますか?
いいえ。一定の要件を満たした場合に本人の意向による転籍が認められる制度です。一般的な労働者と同じように完全に自由な転職が認められるわけではありません。
Q6.2027年4月になったら現在の技能実習生は帰国しなければなりませんか?
いいえ。一定の経過措置があり、条件を満たす場合は技能実習を継続できる場合があります。
参考・出典
本記事は、2026年8月28日時点で公表されている出入国在留管理庁等の情報をもとに作成しています。
-
出入国在留管理庁「育成就労制度」
-
出入国在留管理庁「育成就労制度の制度概要・関係法令」
-
出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」
-
出入国在留管理庁「育成就労制度運用要領」
-
出入国在留管理庁「育成就労制度に係る施行日前申請」
-
出入国在留管理庁「特定技能制度」
※育成就労制度は2027年4月の施行に向けて、今後も運用要領や分野別の基準等が更新される可能性があります。実際の申請・受入れにあたっては、必ず最新の出入国在留管理庁の情報をご確認ください。